第4章 訓練初日
悪くないって?という事は、いいのかな?
グルグル頭の中でさっきの言葉の意味を考えていると、リヴァイ兵長から声がかかった。
「どうした、早く手を動かせ」
「えっ?」
振り返るとそこには、白い布で口を覆い、三角巾をかぶって、ハタキを持ったリヴァイ兵長がいた。
「ぶふっ」
胸を張って言える。思わず吹き出した私は絶対悪くない。
だって特殊部隊最強の男が、腹筋バキバキの男が、可愛いらしく口を覆って、三角巾までしてハタキを持っているのだ。
「あ?なんだ、削がれてぇのか。」
吹き出した瞬間手で抑えたが、バレバレだったらしい。
普段から悪い目つきが、より研ぎ澄まされている。
ダメだ、このままじゃ削がれる。私は真顔に戻って言い放った。
「いえ、とてもよく似合っています。最高です。
では、私はあちらの汚れている場所の清掃を…」
早口で言い放ち、リヴァイ兵長から逃げようと背を向けて歩き出した所で、後ろから片手がまわされ頬をムニュッと押しつぶされながら、引き寄せられる。
背中越しに胸板を感じ、ドキッとしてしまう。
頬をムニュッと掴まれたまま上を向かされ、リヴァイ兵長の鋭い三白眼が私を捉える。
「そっちはもう綺麗なはずだが。」
「ん、まちがうぇました」
ムニュムニュと開ききらない口で謝罪した。
「まぁいい。この後はちょうど訓練だしな。」
片手を話され解放された私は聞き捨てならない言葉に口が開いたままリヴァイ兵長を見つめた。
今、ちょうど訓練だしなって言ったよね?
ちょうどって何?どこがちょうど?
動揺してバケツを倒してしまい、リヴァイ兵長から視線をそらしたが、さっき私を見つめるリヴァイ兵長の口角があがっていたのは間違いでは無かったはずだ。
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「兵長、おはようございます。リラもおはよ。」
「うわっいつも以上に机が綺麗なんだが」
「ほんとに!怖いくらい光ってるよ」
エルドさんや、グンタさん、オルオさんらが出勤し、皆んな突っ込んでいたのは、清掃の高いクオリティーについてだった。
さっき動揺した後に紛らわすように清掃したのが良かったのか、悪かったのか。。
とりあえず、今はただのスーツ姿に戻っているリヴァイ兵長を見て、私だけが知っているお掃除スタイルを思い出し、口角が上がってしまった。