第4章 訓練初日
「まださすがに誰もきていないか」
朝礼は9時から始まるが、新人として早く来るべきだと思い、6時半には会社に到着していた。7時半くらいに着いてればいいよっとエルドさんは言っていたから、皆んながくるまでだいたい一時間程時間がある。
「その間に、終らせないとねっ」
私は、スーツのジャケットを脱ぎ、シャツの腕まくりをした。
ビルを管理している用務員さんからあらかじめ借りていた、バケツと自前の雑巾を用意し、班員の机上を拭いていく。
州警察の時から、清掃は私の担当みたいになっていた。
以前の職場の人はガサツな人が多く、少しでも目を離すと要らない書類やゴミが溜まってしまう為、その度に私が片付けていた。
同じように机から、棚、椅子、窓など清掃していて、ふと気付く。
リヴァイ班の周りはとても綺麗に片付いている。
後ろを振り返ると同じフロアに他の班の机のかたまりがいくつかあるか、どの机上も書類やらなんやらが散らかり放題だ。
片付けがいのあるその光景に手を出しそうになるが、流石に初日から他の班の周りを清掃するのは気が引けたので、グッとこらえた。
きっとリヴァイ班には、私みたいな清掃担当がいるのかなーっと思い清掃を進めていくと、廊下から足音が聞こえてきた。
段々大きくなる足音に、誰かが出勤してきたのだと思い目線をドアに向ける。
ガチャッ
「なんだ、早いな。」
「リ、リヴァイ兵長!…おはようございます!」
ドアから入ってきたのは、数時間前まで一緒にいた姿だった。
何もなかったにせよ、男性の部屋で一夜を共にしたという事実が少し気恥ずかしくて、思わずどもってしまった。
「これは、…お前がやったのか?」
気恥ずかしくて頬が赤らんでいるであろう私の横を通ぎ、リヴァイ兵長は自身の机の裏をなぞっていた。
思わず目を見張り、いや、そこっ?とツッコミたくなる。
普通清掃を確認するなら、机上じゃないのか?
もちろん机の裏も拭いてはいたが、その姑並みの監査に、やり直せ!とか言われたらどうしようと、少し不安になりながらも小さく答えた。
「は、はい。私です。…何か至らぬ点がありましたでしょうか?」
「いや、
…悪くない。」
リヴァイはそう言うと、ジャケットを脱いでシャツを捲り始めた。