第10章 海賊の息子
「なおったーーっ!!!」
「応急処置だけどね。穴を塞いだだけだし。」
「へ〜、あんた裁縫できるのね。」
帽子のてっぺんに大きく空いてた穴を縫って糸で隠しただけだというのに、ルフィは大袈裟に喜んだ。そんな大したことじゃないのに、ナミまで関心してるし。
「まあね〜、ナミの方が器用そうだけどね。とりあえず、強くつついたりしない限り大丈夫だと思うよ。」
「いやー、わかんねぇわかんねぇありがとう。あんなにボロボロの帽子をここまでなお…」
不自然に言葉を止めたので裁縫道具をしまう手を止めてルフィを見たら…ルフィの手が帽子を貫通していた。
「……ルフィ?人の話はちゃんと聞こうね。」
「は、はい…」
「………で?」
「も、もう一回直してください。」
「…………はぁ〜…貸して。」
あー、せっかくやったのに全く。もう一度裁縫道具を出して縫い合わせる。
「ちょっと甘いんじゃないの?もっと怒っていいはずよ。私だったら針を刺すわ!」
「ん〜?私は怒りの沸点低いからねぇ。」
感情に出すのはね。心の中は煮えくり返ってることが多いけど。今はそんなに怒ることでもないし。ナミはまた溜息をつく。
「お前らうるせぇな。眠れねぇじゃねぇか。おれはハラも減ってんだ…おい、何か食糧わけてくれよ。」
ゾロがナミに頼む。なんでナミに言うのよ、私も食糧あるのに。
「だいたいあんた達おかしいわよ。航海する気本当にあんの!?食糧も水も持ってないなんて!海を舐めてるとしか思えないわ!!」
「いや、食糧ならあるんだよ。」
「は?じゃあ何で私に言うのよ。」
「リンゴはもう飽きたんだ。」
「だってよ。」
「なにそれ………まぁでもあんたがいてくれてよかったわ。じゃなきゃ今頃二人共死んでるもの。」
やった、しっかり者ってことだよね!でもそう言いながらゾロにパンを渡すナミは優しいんだなって思う。