第52章 決闘
「私ちょっと降りてみるわ。」
「おう。」
ゾロに1言言って屋上から出ていく。別に聞き込みしに行くだけだからいいよね、チョッパー。宿から出ると多くの住人が動き出していた。店を閉じる準備をしていたり、アクア・ラグナが来るぞ、と言いまわっていたりと慣れている様子だった。その辺で新聞を読んでいるおじさんに聞いてみる。
「すみません、あの……さっきの放送って何ですか?」
「ん?あァそうか君…旅人かい?いや、運の悪い時にここへ来たなァ。“アクア・ラグナ”ってのは『高潮』さ。」
「高潮?」
「ああそうだ。ちゃんと高い場所へ避難しとかねェと、この町は海に浸かっちまうぞ。」
「えっ、浸かる!?そんなに大きいんですか!!?」
「あァ、まぁ別に今すぐってわけじゃねェから大丈夫だ。予報じゃ今夜半すぎと言ってる。まァ毎年の事だ、気ィつけなよ。」
「あ……ありがとうございます。」
高潮って…もはや津波じゃない?そんなこの町を飲み込んじゃうほどの高潮が来るなんて…パニック映画かなんかなのか?とりあえずゾロに伝えよう。あそこにいては高潮に飲み込まれてしまう。
「ゾロっ!!」
「……………あぁ?もう帰ってきたのか…」
「さっきね、町の人に聞いてきたんだけど…この町を飲みこむくらいの高潮が来るんだって。みんなに知らせないと…」
「高潮?」
相変わらずあぐらをかいて寝ていたらしい。成り行きを見てる、なんて言って見てないじゃないか。それより私がこんな慌てて報告しに帰ってきたっていうのに、その余裕ぶりようは何よ。
「こんな放送が流れてんだ。あいつらはあいつらで何とかすんだろ。」
「……………まぁ…」
ルフィやナミは造船所に言ったから、きっと誰かしらから話は聞いてそうだ。サンジとチョッパーも町に出たから心配はいらないだろう…私が気にしてるのは、船を止めてるウソップだ。
「…やっぱりちょっと探してくる。」
「……………余計なことはすんなよ。」
多分私が考えてることわかってるんだろう。ゾロへの返事はせず、そのまま屋上から出ていく。昨日別れたばかりの元仲間を見捨てるなんて私にはできない。というか、あれはウソップだけが悪いわけじゃなくて私にも十二分に責任があるのだ。とにかくメリー号が停めてある岬へと向かう。