第51章 誘拐
「知ってんだよ………なぁ、おれが空島で誰もいねェハズの船から音を聞いたって言ったの…覚えてるか?」
「…………あぁ…試練終わりで騒いだ次の日のやつか。」
「そうだ、あの時……直接あいつが言ったのか、気のせいなのかもわからねェが……『大丈夫、もう少しみんなを運んであげる』と……バカバカしいかも知れねェが………おれは…あれは…メリー号の化身だったんじゃねェかと思うんだ…」
空島でお化けを見た、と騒いでたウソップ。あの時は本当にお化けだと思って怖がってた。でも、確かに騒いだ後あれは誰だったんだろうか…と考えてたのを覚えてる。
「……え、だったら……何でルフィに言わないの?もしかしたら…」
「言って状況が変わるか?」
「……………でも、」
「おれはメリーを見捨てて次の航海になんて行けねェ。」
今私がどうこう言ってもウソップの決心は揺るがないだろう……ウソップがいない麦わらの一味なんて考えたことなかった。もうルフィと決闘することは決まってるし、ウソップのことだ…きっと意地でも戻ってこないだろう。
「………分かった……ねェ…ウソップ。」
「……何だよ。」
「…………やっぱり何でもない。ごめんね、」
「おう……」
私がもし能力を持っていて、フランキー一家とちゃんと戦うことができてたら?もし負い目を感じて私達がフランキー一家にカチコミに行かなかったら?そもそも私達が2億なんて持ってなかったら……こんなことにはならなかったかな。日が暮れたらまたウソップが船にやって来る。それまで待っていよう……
「ただいま…………」
船に戻ってきた。結局私が行っても行かなくても状況は変わらなかった。元々ウソップを連れ戻しに行ったわけでもなかったので、本当に何をしに行ったんだということだな。
「ウソップのところか?」
「…………ゾロ…」
みんなはきっとキッチンに集まってるのだろう。ゾロは普段と変わらない、あぐらをかいて寝る体制をとっていた。非常に落ち着いてる…ゾロはなんとも思わないのか。いや、思うところはあるはずだ。