第36章 ロマン
ヒュンヒュン………ザクッ…!!
空中で逃げられないベラミーは、いくつかの氷のつぶてに刺さり血を出す。やっぱり致命傷を与えられない攻撃ばかりだけど、こういう小細工有りの攻撃が一番自分に合ってるスタイルなんだ。
「………ちっ、…面倒くせェ能力持ってんじゃねェか。なァ?弱小海賊のお嬢ちゃんよォ…痛い目みないと分かんねェみてェだな!!」
痛い目みないと、ってことはちょっとは私の攻撃が効いてるってことでいいんだよね。じゃあもう大技出してもいいよね。バナナワニを瞬殺した技を…あの時は必死で何してるのか分からなかったけど、もう分析済みだ。体の中の水、を操れたのかと最初思ったんだけど違って。相手の体外にしたたってた水の圧力を上げて衝撃波を生み出していたようだ。自分の中にある水の圧力をグッ、と上げて外に出した途端に爆発を起こすか起こさないかのギリギリで放出する。相手の体外の水に自分の水を飛ばして当てることで爆発を起こし、さらにその爆発が連鎖して体中を巻き込んで衝撃波として攻撃することができる。うーん、自分で説明してても分からない。ベラミーは私に向かってくる気満々でバネを極限まで縮めている。
「終わりだ!!!」
「っ、当たって……」
真っ直ぐに飛んできたベラミーに向かって、圧縮した水を飛ばした。相手に当たり、巨大な衝撃波へと化す。どうだ、これは直撃だろう……
「……えっ、」
「かはっ……」
技をくらって倒れたのは…ベラミーではなくサーキースだった。確かにベラミーに向かって技を放ったはずなのに…
「ハハッハハ!!どこ見てる!?」
「……ひ、っ」
声が聞こえたのは真横で…拳を突き出して突撃してきた。咄嗟に氷の壁を作ったが、限界まで圧縮されたバネの勢いで速攻砕かれ…勢いはそのままに、私の腹にもろに当たった。そっか…バネで私の攻撃を受ける前に横に避けたんだ。相手が避けることなんて考えてなかった。この技を受けたら、とか、もし受けて立ったらとかしか考えてなかったのが敗因だろうな。せっかく守ろうと出てきたのに、あの時の悔しさを繰り返さないためにも技を分析して改良したのに、結局駄目だったじゃないか。というか、またルフィの元を離れて怪我して……きっと怒られるんだろうな、なんて考えて私の意識はなくなった。