第35章 同志
「ここからが本題だ。言っておくが、命を賭けろ。」
「「もう瀕死。」」
ナミのげんこつにより顔が腫れ上がってる2人を見て御愁傷様、と手を合わせとく。
「“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”。この海流に乗れば空へ行ける。理屈の問題だ、わかるか?」
「あ、……それって……………船が吹き飛ばされちゃう海流なんだってベラミーが言ってたやつだ。」
「そうか、吹き飛べばいいんだ、雲の上まで、ははは。」
「海流で?」
「………でも、それじゃそのまま海に叩きつけられるって聞いて…」
「普通はそうだな。大事なのはタイミングだ。まず海流に突き上げられるって状況も口で言や簡単だが、おめェらがイメージする程さわやかな空の旅にはならねェ。“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”はいわば災害だ。本来断固回避すべき対象なのさ。」
だかさベラミー達もバカだと笑っていたのか。それを知ってるから。でも、あいつらが知ってたのは一般的な常識であって私達が目指すものはまた別なんだろう。
「…………一体どういう原理で海流が上へ上がるの?私達、今までそんなの聞いた事もなかったし…」
「そのバケモノ海流の原理ってのも当然予測の域を超えない。そこに突っ込んでまで調べようってバカはいねェからな。定説はこうだ。海底のより深くに大空洞があり、そこに低温の海水が流れ込む。下からの地熱で生じた膨大な蒸気の圧力は、海底での爆発を引き起こす。それは海を吹き飛ばし、空への“海流”をも生み出す程の“大爆発”だ。時間にして約1分間、海は空へ上昇し続ける。」
「1分間…水が立ち登るってどういう規模の爆発!?」
「爆発の場所は毎回違い、頻度は月に5回。」
「コッパ微塵になれってのか?」
「だがまァ…雄大な自然現象を言葉や理屈で言い表すなど愚かな事だ。」
「じゃ…じゃあつまり!!月に5回しか生まれねェその海流の上空にうまく…“空島”がやってこなきゃ。」
「あぁ、飛び損だな。そのまま何にひっかかる事もなく、海面に叩きつけられて全員海の藻屑だ。もっとも“積帝雲”にうまく突っ込めた所でそこに“空島”が存在しなきゃ結果は同じかも知れねェが。」