第35章 同志
「……!!まさに男の…………!!」
「……じゃああいつらは?さる達は何でここにいるんだ?」
「……そりゃまた海底にかける男達の拳で語る熱いドラマがあったんだろうなァ。」
「あいつらは絵本のファンだ。」
「ファンかよ。」
「ずいぶん簡単なつながりね。」
男のなんとやらにまた感動して涙を流すウソップだったが、猿2人との簡単な繋がりで突っ込んでいた。その海賊時代の時に船員だったとか、ひと波乱があったのかと思ったんだけど。
「5・6年前になるか。おれの噂を聞いて押しかけてきた。『ノーランドの黄金は絶対あると思うんだ』ってな。ここらの海は深いんだ………暗く冷たい海中では、より一層孤独がつきまとう。おれは一人で来る日も来る日もただ潜って探す日々…そんな生活の中にズカズカと入り込んで来て、勝手におれの手下になって暴れ回りやがる。ああいう一途なバカには、正直救われるんだ…わかるか……?」
あぁ、クリケットさん優しい顔してる。決して笑ってるわけじゃないけど、でもやっぱり…嬉しかったんだろうな。人間一人じゃ生きていけないっていうもんねぇ。猿2人は、孤独で生きてくつもりだったクリケットさんにとっての光になったんだろうな。ちょっと感動するね。
「わかるぜ、そうだよな…本物の同志ってのはただそれだけで心強く……」
「まー、でもさるの話はおいといてよ。」
「じゃ聞くな!!!歯ァくいしばれ〜〜〜!!!」
「だから…!!おれは“空島”に行きてェんだよおっさん!!!」
ルフィはずっとそれしか言ってない。でも確信はついた。この人は、クリケットさんは…空島への行き方を知ってる。
「…フフフ、せっかちな奴だ…だから話してやったろ。“空島”の証言者はその『うそつきノーランド』。こいつに関わりゃおめェらもおれと同じ笑い者だ。」
「……もう手遅れですけどね…」
クリケットさんには聞こえない程度にボソっ、と呟く。私のドスの効いた声に反応したウソップとチョッパーがビクッ、としていた。
「え!?そいつ空島にも行った事あんのか!?」
「残念ながら行ったとは書いてねェが…」
「航海日誌…まさかノーランド本人の!!?」
「そうさ。その辺…読んでみろ。」
クリケットさんは棚からボロボロの本を出して、ナミに手渡した。こんなボロボロの本、ちょっと扱い方を間違えるとすぐ破れそうで怖い。