第35章 同志
ウソップは興奮したように鼻を膨らまして問う。そういう男気のある話は、確かにウソップが好きそうなものであるが…
「バカ言うんじゃねェ!!!」
どこから出したのか、銃でウソップを撃った。運良く当たらなかったウソップは、壁に張り付いて静かに泣いて怯えてた。わざと外したと思いたいが、それにしてもいきなり撃つのは心臓に悪いからやめてほしい。
「大昔の先祖がどんな正直者だろうが、どんな偉大な探検家だろうが、おれに関係あるか!!!!そんなバカ野郎の血を引いてるってだけで、見ず知らずの他人から罵声を浴びる子供の気持ちがお前らにわかるか!!?おれはそうやって育ってきたんだ!!!」
罵声か…じゃあジャヤの酒場で私達が受けた罵声や笑いをずっと受けてきたってことだよね。確かに、あの数分だけで耐えるのがキツかったし、船についた途端子供みたいに泣いちゃったし…私だったら耐えられないかもしれない。
「だがそうさ。この400年の間には、一族の名誉の為にとこの海へ乗り出した者も数知れねェ。その全員が消息不明になったがな。おれはそんな一族を恥じた。そして家を飛び出し、海賊になった。」
「へーー、おっさんも海賊なのか。」
「別になりたかったわけじゃねェ。ノーランドの呪縛から逃げ出したかったんだ。しかし、10年前…………冒険の末、おれの船はなんとこの島に行き着いちまった。くしくもモンブラン家を、ノーランドを最も嫌い続けたこのおれだけが行き着いた。絵本の通り黄金郷などかけらも見当たらねェ。この島の岬に立つと、これも運命と考えちまう。もう逃げ場はねェ………あるのならそれもよし…ねェのならそれもよし…別に黄金を見つけて奴の無実を証明したいわけじゃねェ。おれの人生を狂わせた男との、これは決着なのさ。おれがくたばる前に…白黒はっきりさせてェんだ…!!!」
なんか……凄い話を聞いてしまった。皮肉なもんだね、嫌いな自分が真っ先にこの島へ辿り着くなんて。でも、嫌いなんだろうけど、心の底から嫌ってるってわけでもなさそうな気がする。