第35章 同志
「おいみんなー、留守だ!!」
「絵本…ずいぶん年期の入った本ね。『うそつきノーランド』だって。あはは。」
「ほー、イカスタイトルだな。題材がいいぜ。」
家から出た時に、本を持ったナミがいた。うそつきノーランドか…聞いたことがあるな。
「『うそつきノーランド』!?へー、懐かしいな、ガキの頃よく読んだよ。」
「知ってんの?サンジ君。でもこれ、“北の海(ノースブルー)”発行って書いてあるわよ。」
「あぁ、おれは生まれは“北の海(ノースブルー)”だからな。みんなにゃ言った事なかったか?」
「初耳だな。お前も“東(イースト)”だと思ってたよ。」
「私も。じゃ、育ちがイーストブルーなんだね。」
「そうだな、まァどうでもいいさ。こいつは“北”では有名な話なんだ。童話とは言っても、このノーランドって奴は昔実在したって話を聞いたことがある。」
実在した人の話が童話になるって凄いよね。それだけ偉業を成したって事だ。ナミがおもむろに本を開いた。お、読み聞かせてくれるの?私は近くの切り株に座って聞く体制を取り、耳を傾けた。
「むかしむかしの物語。
それは今から400年も昔のお話。
北の海のある国に、モンブラン・ノーランドという男がいました。
たんけんかのノーランドの話はいつもウソのような大ぼうけんの話。
だけど村の人達にはそれがホントかウソかもわかりませんでした。
あるときノーランドは旅から帰って、王様にほうこくをしました。
『私は偉大なる海のある島で、山のような黄金を見ました。』
ゆうきある王様はそれをたしかめるために2000人の兵士をつれて、偉大なる海へと船をだしました。
大きな嵐やかいじゅう達との戦いをのりこえて、その島にやっとたどりついたのは王様とノーランド、そしてたった100人の兵士達。
しかし、そこで王様達が見たものは何もないジャングル。
ノーランドはうそつきの罪でついに死刑になりました。
ノーランドのさいごの言葉はこうです。
『そうだ!山のような黄金は海にしずんだんだ!!!』
王様たちはあきれてしまいました。
もう誰もノーランドをしんじたりはしません。
ノーランドは死ぬときまでウソをつくことをやめなかったのです。
……あわれウソつきは、死んでしまいました。“勇敢なる海の戦士”に…なれも…せずに。」
「おれを見んなァ!!!切ない文章を勝手にたすなァ!!」