第34章 夢を追う者
「ロ…ロ…“記録指針(ログポース)”はちゃんと空を指してるぅ!!?」
「ひゃぁっはっはっはっはっはっは!!!“記録指針(ログポース)”ってのは…すぐイカれちまうもんさ。」
「……………っ。」
私の言葉でまた海賊たちの笑いに火がついてしまった。さすがの私も耐えられず、みるみると顔が熱くなっていくのに気がついた。間違ってることは言ってないはずなのに、まるで私達が異端者みたいに。
「ハッハッハッハッハッ!!!オイオイ…まいったぜ、お前らどこのイモ野郎だよ……そんな大昔の妄想を信じてるのか?空に島があるって!?ハハハ…!!一体いつの時代の人間だよ…“突き上げる海流(ノックアップストリーム)”もその一つだ。そういう海流があることも知らねェんだろうな…その海流の犠牲になった船は空高く突き上げられ、そのまま海へ叩きつけられる。何も知らねェ昔の航海者は船が降る奇怪な光景を見て、『空島』を想い描いた。『きっと空にはもう一つの世界があるんだ。』…!!ハッ!!バカな現象には全て理由があるもんだ。“夢”の理由なんざ今に全て解明される!!呆れたぜ……お前をテストして“新時代”への船員(クルー)に迎えてやろうと思ったのに、とんだ妄想野郎だ……いいか…海賊が夢を見る時代はもう終わったんだ!!!黄金郷!?エメラルドの都!?大秘宝『ワンピース』!!?“夢の宝”に目がくらんだアホ共は足元の利益に気づかねェ…!!この海の時代に誰よりも強く海を渡れる野郎共が、ありもしねェ幻想に振り回されて死んでいく!!!死んだバカはこう言われるのさ。『あいつは夢に生きて幸せだった』!!!ハハッハ…!!!負け犬の戯言だ!!!そういう夢追いのバカを見てるとおれァムシズが走るんだ!!!」
カウンターにあったお酒の瓶を思いっきりルフィにぶつける。勢いで割れてしまい、破片が周りに飛び散る。この人は…夢を追わない海賊だ。ルフィと正反対の人だ。
「てめェみてェな軟弱なヤロー共が海賊でいるから、同じ海賊を名乗るおれ達の質まで落ちちまう!!」
……?どうしてルフィは起き上がらないんだろう。お酒の瓶で殴られた位じゃほぼ無傷に近いと思うのに、やられっぱなしになってるルフィに疑問を持つ。それはゾロも同じだったようで、こんな状況だというのに顔を見合わせる。