第31章 またね
一人一人ビビに顔を会わせてから窓から外へ出る。他の人に挨拶をしていかないつもりなんだろう。まぁお邪魔していた身だし、海賊だからあまり接触があってもよくないんだろう。ウソップが来い来い言ってるルフィを無理やり窓の外に連れ出して、私が最後になった。ヒビの顔を一回見て、背を向けてロープに手をかけたとき、ビビに呼び止められた。
「なまえさん!!……………っ、」
「………ビビ…あの、」
「ありがとう。」
お互い何を言っていいのか分からず言葉を見失う。だけど、はっきりとビビは私に対してお礼を行った。みんなじゃなくて、私に。
「………何回も聞いたよ、それは。」
「違うわ。国じゃなくて………上手く言えないけど、あなたのお陰で私は変われた。」
私のおかげでビビは変われた?私は本当に何もビビに与えてなかったと思ってた。ビビに勇気を与えたゾロ、ビビを奮い立たせたサンジ、ビビに寄り添っていたナミ、ビビを励ましていたウソップ、ビビを叱咤して正しさと本当の強さを教えたルフィ。私はただ、みんながしてきたことを真似していただけだ。なのに…
「なまえ〜〜!!!何やってんだ、早く来いよ!!!」
下からルフィの声がする。慌ててロープにもう一度手をかけて、今度こそ降りようと窓をまたぐ。最後にビビを見ると…
「本当にありがとう、なまえさん。」
「……っビビ…」
今まで見たこともないスッキリとした笑顔を見せたビビ。私は何かをビビに与えていたのだ。本当は抱きしめたかった。だけど、抱きしめたらここから離れられないような気がして…
「……っまたね!!」
一言だけ。短いけど、これだけ。明日のことは分からない。来るかもしれないけど、何となく…本当に何となく分かるのだ。ビビは来ないって。