第27章 かけるモノ
ドアを開けると、まだ穴を掘る音が聞こえた。夜中までこうやって穴を掘り続けているんだな…1人でも多くいたら、もっと早く水が出るだろうに。
「……ん?まだ眠れないのかい?」
「…目が、覚めてしまって。」
「……私のところにいても穴を掘っているだけだからつまらないと思うがね。」
「そんなことないです。」
私が今、水を出してもいいだろう。ノドが乾いているんなら、私の水で潤せば良い。ただ…こうやってがんばって掘っているのは単に水がほしいからではないことを知っている。ここはオアシスだった町。それをもとに戻そうとしているのだ。安直に水を出してはいけない、と躊躇われてしまう。
「………ん?……おぉ…!!」
「…?どうしたんですか?」
トトさんが掘っているのとは違う穴から、地面が湿っているのが見えた。これは…水が掘り当てられたのか?
「もう少し…もう少しだ……」
「…待って、トトさん私に任せて。」
水がきっとその奥にあるはず。まだ枯れていなければ。私は水を出すこともできるけど、操れることを忘れてはいけない。首元のネックレスが水色に光り始める。くぐっ、と重い何かを押し寄せ、なるべく上へ上へと意識して持ち上げる。すると……
チョロチョロ……
「で、出たーーっ!!」
ほんの少し、ほんの少しだけどチョロチョロと水が出てきた。本当は下にいっぱいあるんだけだ、穴が空いてないからでれないんだよ、みたいな量。それでもこれでオアシスは枯れてなかったって証明ができる。
「なんと……なんとお礼を言ったらいいか…」
トトさんは感動して泣いていた。そりゃそうだよね、ずっと1人で掘り続けてたんだもんね。
「ありがとう……ありがとう…」
「すまんねビビちゃん…とんだ醜態をみせた…」
「ううん、そんなこと………」
朝になり、みんな十分ではないけど体力はそこそこに回復していた。またこっからナノハナまで歩かなくちゃいけないんだよなぁ。
「…じゃ、私達行くわ…おじさん。」
「ああ…ルフィ君、これを持っていきなさい…」
「うわっ、水じゃん!!」
「水ーーーーーー!!?」
お別れを言おうとしたとき、小さなボトルに入れてトトさんは水をルフィに渡した。昨日チョロチョロ出てたやつだよね。分けてくれるんだ…優しい。