第4章 山火事
本当にこの子らは……自分の住んでる島のことぐらい学んだらどうなんだ。私はダダンの部屋にあった本や新聞でこの島、ゴア王国のことを学んでいたからだいたい分かってた。
「……もう、……今ここのコルボ山から北に行くと、“不確かな物の終着駅(グレイターミナル)”、通称“ゴミ山”があるでしょ。」
「あぁ、おっさんたちが住んでるよな。」
「そこから強固な石壁の“大門”を通り抜けると、大きな歩道を挟んで少し治安がまだよくない“端町”に出る。」
「うん、今日そこへ行ってきたんだ。」
「もっと進むと…ちょっときれいになった“中心街”へ出る。その奥にある街の中央、石壁を挟んでその中に住んでいる王族と貴族がいる。そこが“高町”。つまりサボは……いいとこ育ちのお坊ちゃんってところ。」
「「へ〜!!」」
ぼんやり理解したのか、2人は少し驚いた、でも興味を持った顔をした。サボは意外そうに私を見て言った。
「街へ出たことないのに、よく知ってるんだな。」
「まあね。どこまで出ていいのか、だめなのか。危険か危険じゃないかくらい分かってないと。」
「なるほどな。」
「……で?貴族のサボくんの話、続けてもらってもいい?」
大体の説明は終わったところで、本題を促した。するとサボはゆっくりだが、話してくれた
「……本当は親は2人共いるし…孤児でもなければゴミ山で生まれたわけでもねぇ。今日おれを呼び止めたのはおれの父親だ。お前らにはウソをついてた。ゴメンな。」
「謝ったからいいよな!許す。」
「…コトによっちゃおれはショックだ。貴族の家に生まれて…何でわざわざゴミ山に。」
「……何か、事情があったんでしょ。あそこにいたくない、何かが…」
ポツリと漏らした私の言葉に少しだけ反応したサボ。それを見逃さなかったエースが眉を寄せた。
「……あいつらが好きなのは地位と財産を守っていく“誰か”で、おれじゃない!王族の女と結婚できなきゃおれはクズ。その為に毎日勉強と習い事。おれの出来の悪さに両親は毎日ケンカ。あの家におれはジャマなんだ。お前らには悪いけど、おれは親がいても“一人”だった。貴族の奴らはゴミ山を蔑むけど…あの息が詰まりそうな“高町”で、何十年先まで決められた人生を送るよりいい……」
「…………そうだったのか……。」