第22章 ケスチア
「出たか、“島喰い”。」
「道は開けてもらうぞ。エルバフの名にかけて!!!」
「なんか出た〜〜〜〜っ!!!」
「海王類かァ!!?」
みため金魚だ。しかし金魚だと分かるにしても、私達が見上げて分かるのはせいぜい目と大きな口だけだ。というか、目の前に現れたので逃げ道がない。
「舵きって!!急いで!!食べられちゃう!!!」
「なんだこいつは…巨大な…!!金魚か!?ん?巨大金魚…!?どっかで…聞いたような…!!!」
「ウソップ早く!!」
「だ……だめだ!!!まっすぐ進む!!!そ…そうだろルフィ?」
「うん、もちろんだ。」
あんなに怖がりなウソップが、2人がさっき言ってたことを守っている。いや、体はガタガタ震えているけど…そんなになってなおも2人を、エルバフを信じている。ルフィは言わずもがな。
「バカ言わないで!!!今回はラブーンの時とは違うのよ!!?」
「わかってるよ。騒ぐなよ、ほら最後のせんべいやるから。」
「いらないわよ!!!そんなことより船を動かさなきゃ私達は!!!」
「ナミ、諦めろ……」
「ゔ…!!!」
今にも舵をきって逃げたいナミだったが、ゾロに言われて泣きながらも抗議することを諦めたようだった。ルフィに渡されたせんべいを食べながら。ゾロは、どういう気持ちでずっと佇んでいるんだろうか。
「ルフィ!!あいつらは信頼できるんだろうな!!!」
「うん。」
「正気!!?本当にあの怪物につっこんで行くの!!?」
「だめ…もう間に合わないっ!!!」
甲板にいた私はすでに後ろのルフィの近くまで避難していた。大体、大きな像とかそういうの見るだけでも怖いのに、これはスケールが違いすぎる。漫画だと絶対にチビっちゃうレベル。
だから、ここは大人しくルフィに頼る。
「…………ごめん、怖い…」
「おう、いいぞ。」
声が震える。体も震える。言葉は最小限になるが、ルフィを横から抱きしめる感じにつかめば…なんとルフィが背中に手を回してひっつかせてくれた。これで怖さは少しだけ半減する。後は頑張って今から起こることを見届けるだけだ。
「きゃあああああああああ!!!」
食べられた。…多分。周りは真っ暗だし、なんか空気も生臭いというか息苦しい。しかし、ウソップとルフィはまっすぐ、まっすぐと繰り返す。