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異世界人の冒険

第17章 約束


「このクジラはアイランドクジラ。“西の海”(ウエストブルー)にのみ生息する。世界一デカい種のクジラだ。名前は“ラブーン”。そしてこいつらは近くの町のゴロツキだ…ラブーンの肉を狙ってる。そりゃあコイツを捕らえれば町の2・3年分の食糧にはなるからな。だがわたしがそれをさせん!!こいつが“赤い土の大陸”(レッドライン)にぶつかり続けるのにも、リヴァース・マウンテンに向かって吠え続けるのにもわけがある。ある日私がいつもの様に灯台守をしていると、気のいい海賊共がリヴァース・マウンテンを下ってきた。そしてその船を追うように小さなクジラが1頭。それがラブーンだ。“西の海”(ウエストブルー)ではラブーンと共に旅をしてきたらしいが、今回の航海は危険極まると“西の海”(ウエストブルー)においてきたはずだった。本来アイランドクジラは仲間と群れをなして泳ぐ動物だが、ラブーンにとっての仲間はその海賊達だったのだ。船は故障して岬に数ヶ月停泊していたから、私も彼らとは随分仲良くなっていた。そして出発の日、私は船長にこう頼まれた。『こいつをここで2・3年預かっててくれないか。必ず世界を一周しここへ戻る。』と。ラブーンもそれを理解し、私達は待った。この場所でずっとな。」

「だから吠え続けるの…体をぶつけて壁の向こうに…」

何かを察してしまった。こんな察しよくなかったんだけどな、私。だって、待った…って過去形じゃん。

「……何年前の、話なんですか?」

「「「「!」」」」

「もう……50年も前の話になる…」

……やっぱり。ラブーンは仲間の死が受け入れられないんだ。だからレッドラインに頭を打ち続けて会いに行こうとしてる。



しんみりしててもなんだし、私達はクロッカスさんに連れられてお腹の中から出ようと案内をしてもらっている。

「しかしすげぇ水路だな。腹にこんな風穴開けてよく生きてんな。これも遊び心か?」

「医者の遊び心だ。間違えるな。私はこれでも医者なのだ。昔は岬で診療所もやっていた。数年だが船医の経験もある。」

「船医!?本当かよ!!じゃ、うちの船医になってくれ。」

「バカいえ。私にはもうお前らのように無茶をやる気力はない。」

「医者か…それでクジラの体の中に!」

「そういうことだ。これだけデカくなってしまうと、もう外からの治療は不可能なのだ。開けるぞ。」
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