第1章 始まりは突然に・・〈一松〉
一週間の疲れがどっと出たのか、家に帰ってくると何もしたくなくなった。
ひとまず、部屋着に着替えてソファーに横になる。
・・・化粧落として、お風呂も入らなくちゃ。夕飯は・・・めんどくさいし、いっか。あぁもうこのまま寝てしまおうかな。
ぼーっとそんなことを考えてると、インターホンが鳴る。一瞬ビクリと身体が震えたのが自分でも分かった。
・・・まさか、あいつがここまで?
恐怖で動けなくなっていると、インターホンを押したであろう人物の声が聞こえてきた。
「夜分遅くにすみません。隣に越してきたものです。あいさつに来ました。」
ドアホーンで、確認するとスーツをきた男性が立っていた。スーツの中にきているパーカのフードを被っていて顔はよく見えなかったが、私は急いで玄関へと向かった。
『はーい、今開けます。』
「・・・・・久しぶり、花子。会いたかったよ。」
『・・・なっ、なっ、なんで真(まこと)が?』
頭が真白になって動けなくなっていたが、我に返り玄関を閉めようとするも、悲しくも間に合わず真こと元カレは部屋に入ってきた。
後ずさる私に、ジリジリと近付いてくるそいつ。一度は本気で愛していた相手だが、今は怖くて憎い。
『何しに来たのよ。』
「やだなー、恋人たちが会うのに理由必要?」
『もう別れたでしょ?』
「あれ?そうだっけ?」
とぼけた顔した彼から逃げるように部屋の奥までくると、もう背中には壁があった。・・・逃げられない。