第1章 始まりは突然に・・〈一松〉
『そろそろ休憩終わっちゃうから、またね。』
「・・気が向いたらまた来るよ」
一松くんは素っ気なく返す。
・・・まったく、素直じゃないなぁ。
気が向いたらなんて言っているが、ここで再会してから私が来る度に一松くんも必ず来ている。
ここからは予測だが、きっと一松くんは毎日ネコちゃんたちに餌をあげに来ているのだ。
アメリカを離れ就職を都心でして2年。何不自由なく生活していたが、今回、逃げるように赤塚に戻ってきた。
長袖長ズボンでなんとか痣を隠して生活していたのに、いとも簡単に路地裏で再会した一松くんにソレがバレてしまったのは失態だった。
幼なじみが、こんな醜い姿で帰ってきてきっと呆れているに違いない。
パソコンと向き合い、午後の仕事をスタートさせた私はぼんやりとそんなことを考えていた。