第3章 正体
桜と初めて出会った日から
数日経った頃、いつもの3人で島原に行くことになった
また会えるだろうか
そう少し期待しながら島原に向かった
「失礼します」
部屋に通され、落ち着きもなく待っていると
想い焦がれた姿ではなかった
永倉「お、お里ちゃんじゃねーか
今日も頼むぜ」
原田「おい平助、そんな残念そうな顔するなよ」
「そ、そんなことねーし」
顔に出ていたのかと少し焦ると
お里ちゃんは口を開いた
「あら、藤堂さん
誰かお気に入りの女(こ)でもいらっしゃるんどすか?」
「まぁ、お気に入りつうか……」
原田「惚れちまったんだろ」
歯切れが悪い俺の言葉を遮り
左之さんは見透かしていたかのように
言葉を続けた
「あら、どなたどすか?
もし どこのお席にも行ってはらへんかったら
ここの部屋にお呼びしますえ」
永倉「たしか、桜ちゃんって言ってたよな
平助と同じぐらいの歳だったか」
「嗚呼……桜さんどすか……」
お里ちゃんは桜の名前を聞くと
少しバツが悪そうにしていた
「……藤堂さんらは裏島原をご存じですか?」
原田「おいおい、裏島原なんてほんとにあるのか?」
「あまり知られた所ではないんですけど
体を売る女(こ)達がいてるところが裏島原なんです」
「なら桜は裏島原の
遊女ってことなのか?」
「…はい
裏島原の遊女はうちら表島原の芸妓とは
何ら変わりはないんです
極たまに、裏島原の遊女は
表島原に普通の芸妓として
派遣されたりするんどす
桜さんは容姿端麗で
表でも人気のある方どす」
原田「その表と裏ってーのは何が違うんだよ
表の方は体を売ることなんざ
相当ないだろう」
「裏島原の子らは親や親戚
何らかの理由で売られた女(こ)らどす」
永倉「おいおい、そんな吉原みたいなことあんのかよ」
「裏島原は京の吉原と考えてくださいな
確実に桜さんに会うなら
裏に行かはった方がよろしおす」
裏島原
自分が考えたことの無い事実に驚愕した