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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第5章 見返りはパン以外で




規則正しい寝息を立てるムギの髪に触れながら、ローは自分の行動を振り返った。

(なにをやってんだ、俺は……。)

そう自身に問い掛けてしまうのは、己がいかにもらしくない行動を取ってばかりだったから。

事の発端は、今朝。
いつもどおりバラティエに向かったら、ムギの姿がなかったこと。

普段ならばムギがしているはずの品出しやレジはサンジが担当し、従業員がひとり欠けているせいで店内は慌ただしい雰囲気を醸し出していた。

一瞬、ローは自分のせいかと考えた。
なにせ、日曜日の次の日だったから、ムギが自分を避けてバイトを休んでもおかしくはない。
それくらい強引な手で連絡先を聞き出した自覚はある。

しかし、よくよく考えてみたら、ムギがローの存在くらいで仕事を放棄するはずもなく、最悪の場合、彼女は昨夜の出来事を気にも留めていないかもしれない。
そう思ってしまうほど、ムギが自分に対して抱く関心は薄かった。

ならばなぜ?と思ったけれど、ローを敵視するサンジに聞いても答えてくれるわけもなく、不可解な想いを抱えたまま学校へと向かう。

バラティエを不在にしたムギは駅にも現れず、彼女の姿を一度として見られなかったローは、ムギのせいで集中できない一日を過ごす。

好奇心たっぷりの質問をしてくる親友たちは無視するにしても、授業も身に入らず、昼寝も読書もできないほど集中力に欠ける始末。

知ったばかりの連絡先に、何度メールを送ってやろうかと思ったことか。

頭の中は常にムギでいっぱい。

そういう現象を人はなんと呼ぶのか、ローはまだ知らなかった。



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