第4章 注文はパンとレッサーパンダを
シャチやペンギンたちは、ローがムギを指名した時点で、ローとムギになにかしらの関係があると勘づいている。
だから彼らは、二人に接点を持たせようと必死にお節介を焼いた。
「知り合いなら話が早いな。ムギちゃんも緊張してるって言ってたし、しばらくキャプテンと話しなよ。」
「え……。」
話を振られたムギは、困惑して動きを止めた。
間を持たせるために食に徹しようと思ったのか、手にはピザを持っている。
「えー、あー……、ご趣味は?」
見合いか。
強張った表情で質問されたローは、真面目に質問に答えてみた。
「読書だ。」
「ああ、はい……。」
知っています、という顔だ。
それはそうだろう、あれだけバラティエで本を読んでいれば、いくらローに興味がなくても、趣味くらいは把握するもの。
一方、ローはムギのことをほとんど知らない。
彼女が一学年下であったのも、今日初めて知ったくらいだ。
「お前は?」
「はい?」
「趣味、ないのか?」
いよいよ本格的にお見合いな雰囲気になってきたところで、ムギの表情がぱっと明るくなる。
「趣味ですか? そうですね、趣味は深夜に貯金箱の中身を数えることです!」
「……は?」
てっきりパンを食べること……とでも言うのかと思いきや、彼女はローの想像を高々と超えた回答を口にした。
「貯金箱には硬貨しか入れない派なんです、わたし。ほら、紙のお金だと音がしないじゃないですか。わたし、貯金箱に落ちる小銭の音が好きなんです。ちゃりーんって。わかりますか?」
わからない。
全然わからないが、つい勢いに負けて頷いてしまった。
「貯まってくると、音が響かなくなってくるんですけど、それもまた良くて……。」
はぁ……とうっとり息を吐いたムギは、熱弁で乾いた喉を潤すために、グラスに注がれていたジュースを一気飲みした。