第4章 注文はパンとレッサーパンダを
プリンに指定された合コンの時間は17時ちょうど。
駅前にある人気のレストランを予約していて、現地集合である。
気乗りのしない合コンへ向けて刻一刻と時間が迫る中、ムギはクローゼットの前で腕組みをしながら重たいため息を吐く。
「……なに着て行こう。」
彼氏いない歴がそのまま年齢を表すムギは、当然ながら勝負服なんてものを持っていない。
いや、持っていたとしても着ていくつもりはないのだが。
でも、だからといって、Tシャツにジーパンで臨むほどの勇気もない。
プリンの他にどんな女の子が来るのかムギは知らないが、きっとみんな、自分の持てる力を最大限に活かして着飾ってくるのだろう。
そんな中でひとりだけズボラな恰好をしていたら、逆に「目立ちたいからそんな恰好をしてきたの?」と恥ずかしい勘違いをされてしまいそう。
(ワンピースでいいのかな。いや、待って、スカートはやめておこう。なんか気合い入れてるみたいで嫌だもん。)
そう考えている時点で合コンをかなり意識している証拠なのだが、そういうところには気がつかない。
悩んだ挙句、黒地のシャツにカーキ色のサペロットパンツという、シンプルだけどそれほど野暮ったくないファッションに落ち着いた。
滅多につけないカラーリップを唇にひと塗りしたら、少な目の荷物をクラッチバッグに入れて家を出た。
そのまま最寄り駅から電車に乗る。
乗ってから、このままだと到着時間にかなりの余裕が出てしまうと気がついたものの、すでに発車してしまっており、今さら家に帰ることもできない。
バラティエでは常に時間前行動のため、すっかり身に染みてしまったらしい。
(ま、いっか。駅で適当に時間潰そうっと。)