第4章 注文はパンとレッサーパンダを
はた迷惑な来訪は、面倒なことに翌日も続いた。
捨てゼリフを吐いて去ったはずのプリンは、ばつの悪そうな顔をして昼休みに再びムギたちの教室を訪れたのだ。
「お願い、合コンに来てちょうだい!」
「……や、無理ですって。」
「そんな冷たいこと言わないで。ね……?」
昨日とは打って変わって、お願いをしてくるプリンの腰は低い。
どことなく切羽詰まった雰囲気さえ漂っていた。
隣でボニーが呆れているが、今回は静観を決め込むらしく、ムギから買い取ったパニーニを貪っている。
「だいたい、なんでわたしを誘うんですか? そんなに大事な合コンなら、もっと他の人を誘ったらいいのに。」
「他の人じゃダメ! 米田さんじゃなきゃ……ッ」
「だから、なんでですか?」
「だって……。」
わけを口にしかけたプリンだったが、途中で言葉を切って唇を噛みしめた。
そんなに噛んだら、せっかく綺麗についたリップグロスが落ちてしまうのに。
「……駅前のレストランを予約したの。美味しいって評判で、なかなか予約取れないところよ。もちろん、会費はタダでいいわ。」
「嬉しいですけど、緊張して味がわからなくなっちゃいそうなんでー。」
合コンは日曜日らしいから、行こうと思えば行ける。
バラティエは日曜日が定休日なので、基本的に日曜日は暇なのだ。
しかし、貴重な休みを合コンなどで潰す気は毛頭ない。
「じゃあ、会費とは別に謝礼を出すわ。聞くところによると、米田さんはお金に困っているのよね?」
「いや、別に困ってるわけじゃ……。」
これには若干、ムギの心も揺れた。
ご飯代が浮いて、さらにはお金が貰える。
でも、やはり合コンは面倒だ。
人数合わせだとしても、興味もない世界にひとりだけで飛び込み、完全に針のむしろ。
「すみません、他を当たってください。」
頭を下げて丁重にお断りしたら、プリンは肩を落としてため息を吐く。
やっと諦めてくれるのかと思いきや、彼女は鞄に手を突っ込み、最終兵器を取り出したのだ。