• テキストサイズ

パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第4章 注文はパンとレッサーパンダを




「珍しいな、ムギがそこまで言うの。」

「そう?」

話は脱線したが、ボニーはムギが言いたいことをなんとなく察した。

今ムギが挙げた男子たちは、要は女子にモテたい男どもである。
プリンに誘われた合コンとは、まさしくそういう人間が集まる場で、どれだけ素敵な異性が来ようとも、ムギにとっては魅力的な場ではないのだ。

「……別に、彼氏や彼女を作りたい人を馬鹿にしてるわけじゃないんだよ。」

「わかってるよ、お前はそういうやつじゃない。それに、ムギの気持ちもちょっとわかる。ああいうとこって、互いに猫被ってる感じで私も好きにはなれねぇし。」

「ボニー、行ったことあるの?」

「前に一回だけ。男たちに、タダで好きなだけ食っていいって言われたから。」

「それは……、相手のグループに同情するな。」

ボニーの胃袋はブラックホールだ。
以前一緒に食べ放題店に行った時は、次から次へとなくなる料理を前に、店員がしくしく泣いていた。

「でも、これはもうしょうがねぇよなぁ。私らみたいな歳だと、外見ばっかり気にするもんだろ?」

「いや、そんなことないでしょ。勉強とか部活を頑張ってる子もいっぱいいるよ。」

「パンと金に命懸けてるやつもな。」

「はは……。」

誰のことを指しているのかがわかって、乾いた笑みを漏らした。

そうだ、普通なのだ。
誰だって異性の目を気にするし、恋だってする。

ただ……。


『お前のために変わったのに!』


忘れようと努めていた声が不意に蘇り、ムギは小麦色の髪をがしがし乱した。

「あー……、嫌なこと思い出した。」

低めの声で呻いたムギにボニーは目を丸くし、齧りかけのメロンパンを差し出してくる。

「大丈夫か? ほら、パン食え、パン。」

「……ありがと。」

食欲の塊なはずのボニーからメロンパンを一口貰い、目を瞑る。
甘い甘い小麦の味は、ムギの心から嫌な感情を押し流してくれる。

やっぱり、パンがないと生きていけない。



/ 400ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp