第8章 激動のパンフェスティバル
ローとプリンがパンフェスの会場に着いたのは、11時を少し回った頃。
到着予定時刻を大幅に過ぎてしまったのは、何度か渋滞にはまってしまったせい。
早朝に出発したとはいえ、土曜日の高速道路を舐めてはいけない。
加えて、運悪く事故渋滞にも当たってしまったため、到着まで倍の時間を要した。
なにがしんどかったと聞かれたら、徒歩よりも遅いスピードで進む車中でプリンが終始イライラしていたこと。
文句を言ったところで進まないものは進まない。
とはいえ、ローは車に乗せてもらっている身分なので、ぶつぶつ文句を言うプリンに耐えて寝たふりをした。
そんなこんなでようやくたどり着いたフェスティバル会場。
入り口のゲートで配られるパンフレットを頼りに、向かう先はただひとつ。
理由は違えど、ローもプリンも怒っていた。
別にムギが悪いわけではないし、仕事だとわかっていても怒っていた。
そう、怒っていたのだ。
「小倉とハニー、ホイップのお客様! 申し訳ございません、お待たせしました!」
「お持ち帰りの食パン一斤と半斤がひとつずつですね? 380円になります。……え、追加でホイップバタートーストを三つ? ありがとうございます、えぇっと、1280円です。」
「トッピングが違う? も、申し訳ございません! すぐにお取り替えしますので、少々お待ちください!」
これらはすべて、ムギの口から出たセリフである。
行列ができるバラティエのテントに到着し、ムギを見つけてそれほど時間が経ったわけじゃない。
ほんの5分足らずの間に、ムギはいったい何人の客に対応し、そして頭を下げたのか。
そこは、まるで戦場であった。