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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第8章 激動のパンフェスティバル




ローと付き合うようになってからも、ムギの日常はそれほど変わらない。

鈍行列車に揺られて一緒に通学、授業の合間にメールを返し、バイト後は迎えに来たローに送ってもらう。
休日は当然のように会う約束を取り付けられるが、それもまた、付き合う以前から変わらなかった。

「……よく考えてみたら、わたしとローの距離感ってめちゃくちゃバグってた?」

「はぁ? なに言ってんのよ、今さら。よく考えなくてもバグりまくってるに決まってんじゃない。あんた、最初から外堀埋められてたんだから。」

ぽつりと落とした呟きに鋭くツッコミを入れてきたのはプリン。
ムギが自ら「ローと付き合うことになった」と報告したのはプリンとボニーの二人だけで、あとは勝手に噂が広まっている。

「あれだけ惚れられてたんだから、さっさと降参しちゃえばよかったのに。あー、ほんと、あんたみたいな鈍感を拗らせた女、見ていてイライラした!」

「え、そこまで言います? プリン先輩、わたしのことが嫌いですか?」

「ちょっと、自惚れないでよ。好かれていると思ったの? 嫌いに決まってんじゃない。」

「そのわりには、毎日毎日一緒にメシ食ってるよな。ムギとトラなんとか先輩のことも、私以上に心配して。聞いたぞ? わざわざムギのパン屋にまで様子見しに行ったんだって?」

昼休みのチャイムが鳴ってから5分も経っていないというのに、すでに四袋目のパンの袋を開けたボニーが意地悪そうに笑うと、プリンの頬がたちまち赤く染まる。

「か、勘違いしないでよね! あんたたちが上手くいってくれないと、私とサンジさんの仲が進展しないじゃない!」

「え……、進展もなにも、いつもサンジさんに暴言吐いて終わるだけじゃないですか。」

「うっ……るさいわね!! ムギがちゃんと協力してくれないせいじゃない! もっと私に有益な情報を流しなさいよ!!」

ツンデレからの、八つ当たり。
どこかの俺様な誰かさんのせいで、理不尽な物言いにも慣れてしまったムギが提供できるネタといえば、ひとつだけしかなかった。



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