第7章 トラ男とパン女の攻防戦
初めてできた彼氏と、初めてしたお泊り会……もとい勉強会は、はっきり言って地獄だった。
セクハラとしか言いようがない勉強法できっちり頭と身体に覚え込まされたムギは、翌日、虚ろな目をして登校した。
友達はムギの状況を知っているため、同情とエールを送ってくれたが、ボニーだけは違う。
彼女は、ムギの状況を正しく知っているのだ。
「お、おい、ムギ……。どうした、その顔。まさか、フラれ……!」
「んにゃ、無事に付き合いました。」
「んだよッ、心配させんな!」
まぎらわしい!と頬を抓られ、けれども嬉しそうに「おめでとう」と言ってくれたボニーを眩しく思う。
そう、そうだ。
おめでたいことのはずなんだ。
好きな人と想いが通じ、嬉しく、喜ばしいはずなんだ。
なのになぜ、ムギの心はこれほどすさんでいるのだろう。
答えは簡単。
ローの“勉強法”が常識外れだったせいだ。
わかっている。
それほどムギは馬鹿だった。
懇切丁寧に教えてもらって覚えられないほど、ムギは馬鹿だった。
が、ムギは思う。
(どうしてテスト後に告白しなかったんだろ……。)
そうすれば、いろいろとマズイ状況に陥ることも、恥ずかしい記憶を残すこともなかったのに。
まあ、代わりに確実に留年しただろうが。
「ふ、ふふふふ……。」
「ムギ? おい、大丈夫か?」
「勝つ! わたしは、テストに、勝つ!!」
それもこれも、世の中にテストなんてものが存在するせい。
己のアホ加減を棚に上げ、すべての罪をテストへなすりつけて、ローとの恋愛話を聞きたそうにするボニーを無視し、轟々と闘志を燃やしながら、ムギは放課後のテストに挑んだ。