第7章 トラ男とパン女の攻防戦
勃起した尖りを押されただけで、軽く達してしまった。
感じやすいと暴露したものの、だからといって恥ずかしくないわけがなく、首を横に背けてローの視線から逃れようとする。
けれども、こんな時だけ鬼畜なローは、背けた顔を追って唇を寄せ、荒い呼吸を吐き出すムギにキスをした。
それだけならまだよかったけれど、調子に乗ったローの指はクロッチを押し退け、くちゅくちゅといやらしい音を立てながら直接秘処を愛撫する。
「ん……、ふッ、んんぅ……ッ」
ぬるぬるになった秘裂をなぞり、いやらしく収縮する蜜口に指が一本挿入されたら、腰が震えるほどの快楽がムギを襲う。
恥ずかしい嬌声はローの唇に飲み込まれて、それが逆に息苦しさを生む。
もっと乱れたいような、乱れたくないような、正反対の欲求を持て余しながら官能の渦に放り込まれ、狭い蜜路を行き来する指の感触にばかり意識が集中する。
「くぅ、んん……ッ」
奥の方の壁をぐっと押されたら途端に腰が跳ね、中にいる指をぎゅうっと締めた。
淫らな悲鳴を飲み込んだローの唇がようやく離れ、糸を引く唾液を奪うようにぺろりと舐められた。
それで終わればまだよかったのに、意地悪く弧を描いた唇は、ムギがまったく予想だにしていない言葉を吐いた。
「(a+b)3の解き方は?」
「ん……、え……?」
「問題の解き方だ。さっき、勉強しただろう?」
突然勉強の話をされたって、頭がついていくはずもなく、問われたムギは思いついた公式を適当に口にした。
「え、あ、a2+2ab+b2……?」
「違う。答えはa3+3a2b+3ab2+b3だ。なら、a2+2ab+b2はなんの公式だか言ってみろ。」
「は? ちょ、ちょっと待って……んぁッ」
現実的な数学用語を口にするくせに、秘処に挿し込んだ指は変わらず中をまさぐっている。
これでは集中なんかできるはずもなく、なんとなく覚えた勉強の知識は霧散していく。
そして、まさかとは思うが、とある可能性について言及してみた。
「ねえ、なんでいきなり数学の話なんか……。」
嫌な予感は、した。
そして、嫌な予感というものは、だいたいにして当たるもの。
「……勉強、してェんだろ?」
哀れにも、ムギの予感は的中する。