第7章 トラ男とパン女の攻防戦
何度も言うようだが、ムギは今、留年の危機に瀕している。
明日にはもう人生を左右するテストがあって、少しでも多く勉強しなくてはならない。
だから、ローの戯れに付き合っている時間はないのだ。
「勉強教えてくれるんでしょ? か、彼女が留年してもいいんですか?」
未だ自分のことを彼女と呼ぶのは照れる。
が、しかし、今はそんな些細な羞恥を気にしている場合ではなく、ローの暴走を止めるのが先決だ。
「言っただろ、息抜きも必要だ。あまり根詰めても、入る知識も入らなくなる。」
「息抜きの仕方がおかしいと思うんですけど!?」
世間一般の息抜きとは、心安らぐ時間のはずだ。
たった今、ムギとローがお茶をしていたように。
ならばもう息抜きの時間は終わったはずなのに、ローはムギにさらなる“息抜き”の時間を求める。
「俺といるのは、息抜きにもなんねェってか?」
「言ってないです。ていうか、昨日からずっと一緒にいるでしょ。」
「んじゃ、俺の息抜きだ。勉強を教え疲れた。少し息抜きがしてェ。」
「違う方法でお願いします。散歩とか、テレビとか、違う方法で……ひぁッ」
先ほども触れていた脇腹に、再びローの手が滑った。
トップスを捲り、地肌を肋骨になぞって擽られると、ぞわぞわ身体が敏感に沸き立つ。
「や……ッ、くすぐったい!」
「擽ったい、だけじゃねェんだろ?」
「ん…ぁ……ッ」
ぺろりと首筋を舐められたら、擽ったさとは違う感覚が頭角を現して、一度は鎮まりかけた昂ぶりが再燃してくる。
肌を舐める舌も、這いずる手も、すべてが快楽へ繋がるってことは、すでに暴露済みの事実。
燻る熱も、潤う下肢も、隠す必要はなくなった。
でも、隠す必要がないからといって、すべてを素直に曝け出せるかは別問題である。