第7章 トラ男とパン女の攻防戦
「……ったく、お前といると本当に調子が狂う。」
大きなため息を落としたローの髪は、無造作に掻き回したために乱れていて、硬い手触りのそれをちょちょいと直した。
「わかっちゃいるとは思うが、今みたいな発言、俺以外の前でするなよ?」
「なんですか、その余計な心配。言われなくても、他の誰かにこんな恥ずかしい暴露しませんよ。」
ちょっとだけボニーにしようかと思っていたのはムギだけの秘密。
「そういう意味じゃねェんだけどな。」
恥ずかしがり、馬鹿らしい心配をして悩むムギが可愛い……とはさすがのローも口には出さなかった。
どうせ言ったところで、ムギは理解できないだろう。
「……で、お前が悩んでいたことは全部解決したってわけだ?」
「まあ、一応。」
ムギがあんな醜態を曝しても、幻滅されなかったと知れただけで心は晴れた。
男心は最後まで理解できなかったが、ローの懐は広いということはよくわかったから。
しかし、やはり女心と男心は違う。
悩みが解消し、滅多に見られないローの照れ顔を拝めて満足したムギとは逆に、ローは“これから”に満足を求める。
「なら、続けても問題ねェな?」
「え、続き……?」
続きとは、勉強の話だろうか。
そうしよう、是非そうしよう。
でも、顔の赤みを引っ込めて意地悪そうに笑うローの顔は、違う“続き”を求めている。
「あ、あー、勉強ね。うん、そうだね、勉強の続きをしよう!」
身の危険を感じたムギはわざとらしく勉強の続きを促したが、しかし、それに応じてくれるようなローではない。
「ああ、そうだな。気持ちがよすぎて困るお前のために、手取り足取り教えてやるよ。」
その発言、イエローカードです。