第7章 トラ男とパン女の攻防戦
ローはたぶん、女心というものがわかっていない。
でも、それを言ったらムギだって男心がちっともわからず、ローが顔を赤らめる理由も未だ不明。
ムギの両親は生前、よく喧嘩をする夫婦だった。
喧嘩といっても子供に悪影響を及ぼすほどのガチな喧嘩ではなく、子供の喧嘩を拗らせたようなもの。
お互いの意見をぶつけ合っては怒り、時には喧嘩を引きずって無視をしてみたり、本当に子供っぽい。
だいたいの場合はその日のうちに和解をして、喧嘩後はする前よりも仲良くなっているから不思議。
『ムギも好きな人ができたら、いっぱい喧嘩して、納得いくまで話し合いなさい』
というのが、両親の教え。
ゆえにムギは、理解できない恋人の言動を納得するまで追求する。
「で、なんでそんなに赤くなってるんですか?」
「……だから、察しろと言ってんだろッ」
そう呻くローの顔は当初と比べて赤みが薄れたものの、それでもやはり赤い。
「察せられないから聞いてるのに。わたしはちゃんと言いましたよ? 自分だけ言わないとか、不公平じゃないですか?」
ムギだって、自分の気持ちを白状するのは恥ずかしかったし情けなかった。
今度はローの番だとまくし立てたら、ぐっと息を詰めたローが観念したように頭を掻いた。
「これだから、自覚の欠片もねェやつは……ッ。いや、いい、この際だ。他所で同じことをして余計な虫をつけてきたら堪んねェ。」
大きく息を吐き、すっと伸びた手がムギの柔らかな髪を梳く。
その仕草だけで、なんだか愛しさが込められているように思え、顔の赤みがムギにまで伝染した。
「俺に触られると気持ちよくなっておかしくなるってのはな、男からすりゃ、……最大の殺し文句だ。」
「んぇ……?」
ムギはただ、自分の悩みをローに打ち明けただけ。
もしかしたら幻滅されるのではと思っていたくらいのことが、赤面させるくらいにローの胸を擽ったらしい。
そんなセリフで男を殺せるとは、やはり、男女の差とは未知なる世界だ。