第7章 トラ男とパン女の攻防戦
プリンは暇人なのだろうか。
いや、暇人に違いない。
午前の授業が終わって、5分も経たずに彼女はムギたちの教室へやってきた。
お弁当を提げて「さあ、行くわよ!」と無駄にやる気に満ちた彼女に屋上へ連行される。
「寒ぅ……。なんでわざわざ屋上なんですか?」
「しょうがないじゃない。ここのところムギは有名人なんだもの。中庭にいても誰が聞き耳立てているのかわからないし。」
「はあ。」
十月の屋上は肌寒く、教室や食堂、中庭などいくらでも居心地が良い場所があるのに、わざわざ寒さを我慢して昼食をとる者はいない。
「内緒話をするのにぴったりね」と微笑むプリンは、どこかムギの状況を楽しんでいるようで、げんなりとしたため息を吐いた。
「プリン先輩、わたしで遊ぼうとしているでしょ?」
「あら、失礼ね。ちゃんと相談に乗ってあげるつもりで来たのに。」
「別に、相談っていうほどのことじゃ……。」
ただ、ムギとローの間に誤解があっただけだ。
今はローが意地になっているようだが、彼だって冷静になれば、責任を取る必要がないと気づいてくれるはず。
「ね、当ててあげましょうか? ムギが悩んでいること。」
「当たらないと思いますよ?」
「ふぅん? あんたがローくんに付き合うフリを頼んだと思っていたのは、実は勘違いで、ローくんはムギと付き合っているつもりでいた……ってところじゃないの?」
「んなッ、なんでわかるんですか!?」
まるで、その場に居合わせたかのように言い当てたプリンに度肝を抜いた。
理由を尋ねると、彼女は自慢げに胸を反らした。
「簡単よ、私だったらそうするもの! 言質を取って、外堀を埋めて、既成事実を作る。完璧な作戦ね。」
「えっと……?」
よく意味がわかっていないムギの代わりに、今度はボニーが口を開く。
「つまり、トラなんとか先輩は最初からムギと付き合うつもりだったのか?」
「もちろん。」
「いやいやいや、ちょっと待って!」
プリンの推理は素晴らしい。
でも、その憶測だけは間違っている。
「そんなわけないでしょ。ローがわたしと付き合っても、メリットなんかひとつもないんだから。」
ムギは自分の相応を知り、夢見がちな勘違いは絶対にしない人間だ。