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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




待って、落ち着け。
両手で頭を抱えたムギは、ぎゅっと目を瞑る。

(え……、フリじゃないって……つまりどういうこと?)

恋人の真似事を始めてから、ローとはデートをした。
手を繋いで、バイクに乗って、家に行って、……キスをした。

つまりあれは、どういうことだ?

「……冗談、ですよね?」

「こんなつまらねェ冗談、言うと思うか?」

言ってほしい、是非とも。
まったくおもしろくなくても、今なら笑ってあげるから。

「え? じゃあ、わたしたち……なんですか?」

「何度も言わせるな、お前は俺の女だ。」

「……あの、間違ってたらごめんなさい。もしかして、わたしたち付き合ってます?」

「最初から、そう言っている。」

言ってない。
俺の女とか、お前の男とか、いちいち言い方が紛らわしいのだ。

いや、今はそんなことはどうでもよくて。
つまりアレか、ムギとローは恋人なのか?

「や、そんなつもりは微塵もなかったんですけど。」

誤解によってアブサロムを拗らせてしまったムギだ。
ここは、はっきりと告げておかないと。

「不満はない、そう言ったよな?」

「言ったというか、言わされたような気が……。」

「どっちでも同じだ。異論はなかったはずだ。」

「だから、誤解してたんですって。まさか、本当に付き合うと思ってなくて!」

さっきから、会話がおかしい。
なぜこうも、まるでローがムギと付き合いたがっているような話になってしまうのか。

ローは紳士だし、極度の世話焼きだから、中途半端な真似ができなかったのかもしれない。
ならば、この問題を解決するには、交際そのものを解消すればいいだけの話。

「じゃあ、別れましょう。」

その一言を口にした途端、それまで平静を保っていたはずのローの瞳に、明らかに異なる感情が宿った。



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