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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




電話の向こうで、ムギとアブサロムの会話が聞こえてきた。

あのストーカー男は性懲りもなくムギに未練を残し、身勝手な思い込みを押しつける。

二人の会話を耳にした途端、ローはいてもたってもいられなくなり、重厚な鉄門に手を掛けてよじ登った。
見栄えを重視した門は親切にも足場が多く、乗り越えるくらい簡単だ。

これは立派な不法侵入。
ともすれば警察官であるコラソンの立場を危うくする行為だったかもしれないけれど、惚れた女に危機が迫っている状況で、他のことなど考えられる余裕はローにない。

門を乗り越え、ほどなくすると、ムギとアブサロムの姿を見つけた。
忠告を忘れたのか、ムギへにじり寄るアブサロムに殺意を抱く。

愛する女の危機に駆けつけるヒーローになりたいわけじゃない。
ローはただ、ムギに触れようとする男が許せないだけ。

その権利は、この世でたったひとり、自分だけに許されたものだと信じているから。

ローだって、アブサロムと同じだ。
惚れた女の愛がほしくて、外堀を埋め、必死に逃げ道を塞いでいる。

ただひとつ違うのは、ローはムギという女性の真実を知っている。
パンが好きで、あさましいほど節約家で、わりと冷たいくせにお節介で、頭が悪くて、簡単に騙されて、それなのに思いどおりにならない女。

挙げてみれば笑ってしまうほど好きになる要素がない女に、ローは恋をした。

アブサロムとは違う。
それはきっと、ムギの心にも届いている。

だから彼女は呼んだ。
助けてほしい時、家族の名でも友人の名でも、想いを寄せるパン職人の名でもなく……。


「助けて、ロー……ッ」


恋に落ちた。
すでに好きだと自覚していたのに、ハッとするほどムギが好きだと改めて思った。



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