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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




ローの機嫌は最後まで直らなかったが、それでも日が暮れてくると、変わらず彼は「送る」と言ってくれた。
時間も早いし、友達が遊びに来ているのを考慮して、ありがたく辞退をしたけれど、世話焼きの性癖は機嫌で左右されることなく強行される。

「いいんですか? せっかくの誕生日パーティーなのに。」

「別にいい。あいつらは、誕生日にかこつけて騒ぎてェだけだ。」

親友三人は、今もまだローの部屋に残ったまま。
彼らは主役が不在でも、十分楽しくやっている。

「サプライズパーティーをしてくれる友達がいるなんて、幸せ者じゃないですか。」

「勝手に押し掛けられても、迷惑なだけだろ。」

機嫌は悪そうだが、話し掛ければ普通に返してくれる。
よくよく機嫌を悪くさせる人だけど、今日はどんな理由で不機嫌になったのだろう。

ムギはさっぱりわからなかったものの、親友三人はどことなく心当たりがあるようで、実はそれが疎外感をますます際立てていた。

「ほら、被れ。」

「う……。」

マンションの下でヘルメットを手渡され、思わず頬が引き攣った。

「なんだ、まだ怖ェのか?」

「怖いというか……。」

ローのバイクは乗り心地良く、二度目ともなれば恐怖は感じないだろう。
しかし、またあの体勢になると考えたら、喜んで乗りたいものではない。

「どうしても嫌なら、歩いて帰ってもいい。」

けれどその場合、ローも一緒に歩くのだろう。
ならばおのずとムギの答えも決まってくる。

「……乗ります。」

受け取ったヘルメットを潔く被り、ローのバイクに乗り込んだ。
裏道を使って滑るように走るバイクは、5分そこらでムギの家に到着した。

「送ってくれて、ありがとうございました。」

「いや。あいつら、急に押し掛けて悪かったな。つまらなかっただろ。」

「そんなことはないですけど、そういう心配ができるなら、帰らせてくれればよかったのに。」

「ダメだ、逃がさねェと言っただろ。」

ムギを留めておいて、ローにどんな得があるというのだろう。

得といえば、ローにまだ誕生日プレゼントの希望を聞いていなかった。

「誕生日プレゼント、なにがいいですか? なんでもいいんで、指定してくださいよ。」

ヘルメットを返しながらそう言うと、急にローが黙り込んでしまった。



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