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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




ムギがシャチたちにゼフのことを話し終えた時、リビングに行っていたローが帰ってきた。
お菓子を取ってくるだけなのに、ずいぶん遅かった気がする。

(おかげで神経が無駄にすり減るかと思ったよ。)

合コン以来交流がない男たちの中に取り残され、気まずい思いをしたムギは恨みがましい目でローを睨んだ。
しかし、同じ分だけ睨み返されて、ムギはぎくりと身を竦めた。

(いや、なんでわたしが睨まれるの?)

なにも悪いことはしていない、たぶん。
強いて言えば、ムギだけローにプレゼントを渡していない。

でも、これはローだって悪いと思う。
誕生日を知ったのは昨日だったし、なにが欲しいのかも答えてくれない。

ならばいっそのこと、ポチ袋に現金を入れて渡してあげようか。
もし逆の立場なら、ムギはバンザイをして喜ぶだろう。

ローの機嫌の悪さは、ムギよりも親友たちの方が敏感に察知する。

「キャプテン、もしかして……、今の話聞いて……?」

青ざめるシャチをローが睨み、ヒッと喉を鳴らしてサングラスがずれた。

(今の話って、別に聞かれて困るようなことは言ってないけどな。)

けれども、不思議に思っているのはムギだけのようで、途端に居心地が悪くなった親友たちは、話題を変えようと視線を彷徨わせ、ベッドに置かれたレッサーパンダに目を留めた。

「なにあれ、ぬいぐるみ? どこで拾ってきたんスか?」

「触るな。」

不用意に手を伸ばしたペンギンが射殺されるほどの眼光で睨まれた。
いくらなんでも可哀想。

「それ、わたしがローにあげたんですよ。」

「そ、そうなんッスね。でも、なんでぬいぐるみ?」

「だって、レッサーパンダが好きだっていうから。……あ、言っちゃマズかったです?」

話してしまってから、秘密にしているかもしれない可能性を考えた。
今のローはとても機嫌が悪いので、ムギも怒られるかも……と危惧したが、予想に反して彼は首を横に振り、長い腕を伸ばしてレッサーパンダを引き寄せる。

「別に隠しちゃいねェ。俺はこいつが好きだ。」

珍しく素直に認めた。
しかし、それを聞いた親友三人の反応は微妙で、なぜかレッサーパンダとムギを交互に見比べる。

見比べたって、どうにもならないのに。



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