第6章 パン好き女子のご家庭事情
数分後、渋々ロックを解除したローが、親友三人を連れて戻ってきた。
「お邪魔~! 見て、キャプテン。ほら、ケーキ買ってきたんだぜ。これから四人で…――」
先頭をきって部屋に入ってきたシャチとムギの目が合った。
サングラス越しではあるが、恐らくはぎょっとしているだろう彼の態度からして、ムギがいるという説明は受けていなさそうだ。
「どうしたの、シャチ。早く部屋に入ってよ……ってあれ、ムギちゃんだ!」
「こんにちは、ベポ先輩。」
にっこりと笑うベポに挨拶をすると、彼は「ベポでいいよぉ」と照れくさそうに頭を掻いた。
なんだろう、ローに呼び捨てを求められた時よりも、遥かに感じが良いと思ってしまう。
「あれ、ムギちゃんがキャプテンの家にいるってことは、もしかしてデート中?」
「デートというか、ただの真似…――」
「ちょ、キャプテン! それならそうと言ってくれよ! 俺たち完全に邪魔じゃねぇか!」
「邪魔じゃありませんよ。だって私たち…――」
「だから帰れと言っただろうが。」
口を挟む隙がない。
早々に諦めたムギは、ウーロン茶を飲みながら傍観することに決める。
「あっちゃァ、やっちまったな。」
「悪いな、ムギちゃん。俺たちも混ぜてもらっていいッスか?」
「もちろんです。」
混ぜるどころか、できるならば帰りたい。
心の内を読んだのか、ムギの隣……ドアに近い方へローが腰を下ろした。
逃がさないと言われているような気がして、内心舌打ちをする。
「ごめんな、キャプテンのサプライズ誕生日パーティーをしようと思ってさ。あ、キャプテンは三日前が誕生日だったんだけど、ムギちゃん知ってた?」
「はい、まあ。昨日知りました。」
「昨日かー! ダメじゃん、キャプテン。そういう大事なことは事前に言わなくちゃ!」
「うるせェな、放っとけ。」
先日の合コン時にも思ったが、彼らとローはとても仲が良い。
ローは変わらず口が悪いものの、三人もそれに慣れていて、和気あいあいとした雰囲気が漂っている。
だからなおさら、ムギのアウェイ感が強まってしまう。
帰りたいと願うけれど、隣には警戒したローが、向かいにはパーティーの準備を始めた三人がいて、とても逃げられやしない。