第6章 パン好き女子のご家庭事情
ピンポーン♪
ローが欲しいものを教えてくれるタイミングで、遮るようにインターフォンが鳴った。
「あれ、誰か来たみたいですね。」
ムギの視線が部屋の外に移り、来客を気にすると、ローが忌々しく舌打ちをした。
「チ……ッ、誰だ。」
そんな凶悪な顔をしないであげてほしい。
もし宅配のお兄さんだったら、不憫すぎる。
しかし、インターフォンを押したのは宅配業者でも新聞の勧誘でもなく、ムギも知っている男たちであった。
『キャプテーン! 遊びに来たよ~!』
開け放たれたドアの向こう、リビングに設置されたモニターを確認したローは、訪ねてきた友人に冷たく言い放った。
「帰れ。」
『えぇッ、そりゃねぇよ! 俺たち、キャプテンの誕生日祝いを…――』
最後まで言わせずに、モニターをオフにしたローが部屋に戻ってくる。
「今の、シャチさんたちの声でしたよね? 誕生日のお祝いに来てくれたんだ。」
「知らねェ。あいつらとは約束なんかしてねェよ。」
「だから、サプライズなんですよね? わたし帰るんで、気にせず遊んでくださいよ。」
ローの友人が来た以上、邪魔をするわけにはいかない。
この場合、身を引くのはムギの方で正しいと思うが、ローはそう思わないのか、あからさまに機嫌が降下する。
「あ? なんでお前が帰るんだよ。お前の方が先約だったはずだ。」
「そうですけど、特にやることもありませんし。」
「だから、これから……。」
なにかを言いかけたローは、眉間の皺をぎゅうっと深め、またもや不快そうに舌打ちをした。
これからムギに用事があったのだろうか。
「どっちにしても、お友達を優先した方がいいと思いますよ。せっかくお祝いに来てくれたんだし。」
諭すように言ったら、思いのほかローは素直に頷いてくれた。
けれど、それで終わるローじゃない。
「わかった。だが、お前も帰るな。ここにいろ。」
「えぇ……。」
嫌そうな声が出てしまったのはしかたがない。
だって、ローの友人たちが来れば、ムギは完全にアウェイ状態になるのだから。