• テキストサイズ

パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




満身創痍でゾンビゲームをクリアし、その後はレースゲーム、格闘ゲーム、太鼓ゲームなど様々なジャンルにチャレンジしてみてわかった。
ムギはゲームに向いていない。

レースゲームでは逆走するし、格闘ゲームはあえて攻撃に当たりにいってしまうし、太鼓ゲームは絶妙なタイミングで音を外した。
ここまでくると、ある意味才能だ。

素人な上にド下手なムギに合わせ、ローはかなりの手加減をしてくれたはず。
とてつもなく退屈な時間だったに違いない。

「すみません、つまんなかったですよね。」

「そうでもない。お前を見ているのは楽しかった。」

「はあ、おもしろいほど下手くそで悪かったですね。」

連敗に連敗を重ね、ムギの心はすっかり荒んでいる。

「それはそうと、今日の分を清算しませんか? ほら、なんやかんやでお昼代も出してもらっちゃったし。さっき両替機で崩してきたんで、細かいのもありますよ。」

崩したお札と小銭で膨らんだ財布を取り出したら、拒否するようにローが腕を組んだ。

「いらねェと言っただろ。誘った男が出すのは当然だ。」

「男女差別ですよ、それ。誕生日でもないのに、奢ってもらえませんってば。」

ローはいちいち面倒くさい。
男のプライドなのか知らないが、こんなに奢ってばかりだと、将来悪い女に引っ掛からないか心配になる。
いや、ローが本気になれば、喜んで貢ぐ女は大勢いるだろうけれど。

「誕生日か……。そういえば、この前誕生日だったな。」

「え、誰の?」

「俺のだ。」

「いつですか?」

思い出したように呟いたローに尋ねたら、彼の誕生日は一昨日だという。
ムギがローに恋人のフリをお願いした日だ。

「じゃあ、なおさらわたしが奢らないと。」

「なんでそうなる。誕生日だから、素直に奢られろ。」

「逆に、なんでそうなりました?」

奢りたいローと、奢られたくないムギ。
両者の意見が一致しない中、ふとローがとある機械に目を留めた。

「……なら、アレを奢れ。それでチャラだ。」

「アレ……?」

ローが視線で示したものを眺め、ムギはびしりと固まった。

自分たちの姿をカメラで撮影し、シールに印刷してくれる機械。
いわゆる、プリクラである。



/ 400ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp