第6章 パン好き女子のご家庭事情
今も昔も、プリクラは女子高生に人気な遊びのひとつ。
撮影機能や技術が目覚ましく発展し、シールだけではなく、画像やスタンプにすることだってできる。
ゲームに興味がない女子高生だって、プリクラ目当てでゲームセンターに通うのは常識だ。
しかし、男子高生についてはその限りではない。
多くの施設が男性のみの客を立ち入り禁止とし、カップルや女性同伴のグループでなくては利用ができない仕様だ。
「プリクラ、撮ったことあるんですか?」
「あるわけねェだろうが。」
「じゃあ、なんでまた……。」
青春の1ページとして、ムギもプリクラくらい撮った経験はある。
でも、いつもラクガキは友人任せだし、他人の写真を貰っても困るという観点から誰かにあげたりもせず、あまり楽しい遊びではないと思っている。
「……理由なんか、どうでもいいだろ。奢るのか、奢らねェのか、さっさと決めろ。」
「えぇ……。撮りたいなら奢りますけど……。」
とは言っても、プリクラなんて400円程度なので、今日ローが使ったお金と比べたら釣り合いが全然取れない。
まあ、撮りたいというのなら断る理由などないが。
休日の夕方、プリクラコーナーは遊びを終えた女子たちでごった返していた。
ローを連れたムギが入ると、突然のイケメン登場にざわめき立つ。
色めいた視線がローに集まり、ついでにムギにも視線が刺さった。
何度目とも知れないほど経験した視線だけど、ここでの視線は場所柄とはいえ、ひときわ鋭く居心地が悪い。
「撮るなら早く撮っちゃいましょうよ。どれがいいとか希望はないですよね?」
「ああ。」
機種の良し悪しがローにわかるとも思えず、適当に空いているところへ入った。
さすがのローも居心地が悪いのか、いつも以上に無口である。
お金を入れて、適当に設定を決めて、背景を選択する。
いざ撮影時間になり、画面を確認してから気がついた。
「……狭そうですね。」
「狭いな。」
プリクラ機は、女子高生をターゲットにして作られており、190㎝オーバーの長身男性を想定していない。
ローの身体は、やや腰を折ってようやく収まる状態だった。