第6章 パン好き女子のご家庭事情
ムギの意見が採用されたかどうかはさておき、次に向かった先はゲームセンター。
テレビゲームがある家庭ではなかったせいか、ムギはゲームセンターにあまり縁がない。
ガチャガチャうるさいイメージのゲームセンターはまさしく騒がしい場所だったが、親子連れやカップルなども楽しむ和やかな場であった。
「クレーンゲームの景品って、いろんな種類のものがあるんですね。わ、メダカが景品になってる台もある! 景品に生き物って、アリなんですか?」
「アリかどうかは知らねェが……欲しいのか?」
「いえ、全然いりません。」
友達の家のペットにはいつも癒されているが、なにぶんムギには飼育経験がないから、ひとりで飼っても責任が持てる気がしない。
ひとり暮らしを寂しく感じる時もあるけれど、責任も持てないのに迂闊に手は出せなかった。
それに、クレーンゲームに関わらず、こういう景品を見るとつい「普通に買った方が安そうだな」と現実的なことを考えてしまうのがムギである。
「クレーンゲーム、上手いんですか?」
「さァな。だが、欲しいと思ったものはだいたい取れる。」
「へぇ……、いい特技ですね。欲しいものはありませんけど。」
「……可愛くねェな。」
チッと舌打ちをされても困る。
欲しくもない景品を強請られる方が可愛いのだろうか。
でも、恋人らしさを演じるのなら、確かにそっちの方が正解だった気がする。
結局、ローの独断で青鼻トナカイのマスコットを取ってもらった。
宣言どおり一発で手に入れたマスコットは思いのほか可愛かったので、家に帰ったらスクールバッグに付けてあげよう。
「コインゲームでもするか?」
「んー、コインゲームか。それよりわたし、あっちのゲームがやってみたいです。」
ムギが指さしたのは、ゾンビ撃退系のシューティングゲーム。
もちろん、未経験である。