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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




ムギはあまり、ケータイをチェックするタイプではない。

自慢じゃないが、交友関係は狭いのだ。
友達はほぼ学校内に固まっていて、用事があれば直接話した方が早く、ついでに返信を忘れる傾向にあったから、友人たちもメールよりも電話を掛けてくるのが常になっている。

ゆえに、ムギがローからのメールに気がついたのは、帰りの電車の中だった。

『今日からバイト帰りは迎えに行く。土日の予定は空けておけ。』

断る隙もないような内容に、ムギは黙して固まった。

今日は金曜日。
本来であれば明日は一日バイトなのだが、時間調整のために休みになったとどうして知っているのだろう。

(あれかな、朝の話を聞いてたのかな?)

今朝、サンジがムギに「明日は休み」と口にした。
なんの変哲もない日常会話だけど、まさかイートインコーナーで聞いていたのだろうか。
もしそうなら、読書をしていると見せかけて、とんだ地獄耳である。

(ていうか、なんで決定事項なんだろ。)

普通、「土日空いてる?」とか予定を尋ねる方が先ではないか。
まるでムギが暇にしているみたいに。
いや、暇なのだが。

(ま、いっか。アブ兄の対策方法でも一緒に考えてもらおう。)

そう気軽に考えたムギは、「了解です」とだけ返事を送信し、電車を降りてバラティエに向かう。
通信制の高校に通うアブサロムは日中であれどムギをつけ回すかもしれないが、人が多く明るいうちは、それほど恐怖を感じない。

バイトが終わった夜、ローが迎えに来てくれるのは、申し訳なく思うがとてもありがたく心強かった。

(また借りができちゃったな。なにかお礼しないと。)

ローに借りを返すのは、どんな宿題よりも難しい。
レッサーパンダ製品なんて、動物園でもなければそうそう見つかりはしないのに。



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