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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




ベポとシャチの手から、すとーんとボールが落ちて床に転がる。

ころころと遊びに出掛けるボールを目の端に捉えながら、ローの視線はケータイ画面にだけ集中していた。
しかし、それを良しとしてくれる仲間ではなく、彼らは食い気味に詰め寄ってくる。

「えッ、ちょ……、その続きは!? そんな爆弾発言をしておいて、放置はないっしょ!」

「付き合ったんスか? え、マジで? いや、気があるのかな~とは薄々思ってたけど、展開が早……。」

「うるせェな、放っとけ。」

煩わしく一蹴すれば、シャチが「放っとけるかァ!」と魂の叫びを上げる。

「キャプテンに彼女ができたってのに、呑気に体育なんかやってられねぇ! しかも、ただ言い寄ってきた女じゃなくて、キャプテンの方が惚れた子なんだろ? 馴れ初めが聞きたい! 告白のセリフが聞きたーい!!」

「シャチ、気持ちはわかるけど、声が大きいんじゃない?」

暑苦しく絡んでくる親友の中でも、シャチは非常に短絡的な性格をしている。
例えば、場を弁えずに大声で爆弾発言をした結果、周囲がどんな反応をするか、あまりわかっていない。

結果、シャチの声は体育館中……バスケをしていた男子たちはもちろん、ネットを挟んでバレーボールをしていた女子たちの耳にも届いた。

ローに彼女ができた。
それも、どうやらローから好きになったらしい。

衝撃のニュースを耳にした同級生たちは、授業などそっちのけで体育館の一郭を見つめている。
集団授業放棄とも思える現場で、体育教師だけが慌てて「集中しろ!」と声を上げていた。

「ご、ごめんキャプテン。俺、つい……。」

「別にいい。」

遅かれ早かれ、噂は広まる計画だ。
むしろ、広まってくれなくちゃ困る。

気を抜くと殺意を向けたくなってしまう従兄の男。
ムギの脅かす男の存在を腹立たしく思う一方で、ローの胸には言葉にできないほどの喜びが満ちている。

その日、ローが企てた噂は瞬く間に広がった。
ハート高校内は当然として、SNSやメールを通じて他校の生徒にまで知れ渡る。

噂を聞いた女子たちの中には、ショックのあまり卒倒した子がいるとかいないとか。



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