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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




さて、付き合うフリといっても、具体的にはなにをすればいいのだろう。

店の前でムギが出てくるのを待ち、当たり前だという様子で隣を歩くローを見上げ、質問をしてみた。

「もしかして今、一緒に登校してる感じですか?」

「……それ以外に、どう思っている。」

どうやら、一緒に学校へ向かっているらしい。
といっても、ムギとローの高校は違うから、一緒に歩くのは駅までなのだが。

しかし、ローはいつも、ムギの考えを上回る。

「今日から、お前と同じ電車で通学する。」

「……は!?」

「なんだその反応は。いちいち可愛くねェやつだな。付き合ってんだ、むしろ喜べ。」

可愛くなくて結構だ。
そして喜べと命令されても、昨日の電車内での視線を思い出すと、作り笑いすら浮かべられそうにない。

「気持ちはとってもありがたいんですけど、その、変な噂が立ちそうなんで……。」

「当初の目的を忘れたのか? 噂になるくらいがちょうどいい。」

「そりゃ、まあ……。でも、付き合ってるって噂が流れるんですよ? 嫌じゃないですか?」

ムギの場合、ローと付き合っていると言われても、信じてもらえず一笑されるだけだろう。
でもローの場合は、女の趣味が悪いな……と周囲に思われてしまうのではないか。

一応は心配しているつもりなのに、ローはきっぱりと断言する。

「嫌じゃない。」

「あ……、そうですか。」

嫌だと言ってほしかったような、言ってほしくなかったような、微妙な気分だ。
ローの世話焼きは重症で、とことん背負い込む性癖なんだなぁ……と思った。

「そもそも、噂なんか気にしてんじゃねェよ。誰がなんと言おうと、俺とお前のことだ。」

「ま、そうですね。人の噂も365日って言いますし。……あれ、意外と長いな。」

「……75日だ。」

呆れたツッコミは聞き流し、前向きに考えることにする。
噂は確かに怖いけれど、どうせ期間限定の恋人だ。

目的はあくまでもアブサロム。
彼には穏便に、かつ速やかに人としての常識を取り戻していただきたい。



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