第6章 パン好き女子のご家庭事情
これはムギの予想だけど、ローにとってプリンは、好みから外れる女性なのではないだろうか。
なら、ローの好みはどんな子か?と聞かれたら悩ましいところだが、彼はあざとい肉食系女子に辟易している節がある。
プリンはまさに、そういうタイプだった。
「プリン先輩は、ロー…先輩のことが好きなんですか?」
危うくローを呼び捨てにしそうになり、慌てて“先輩”をくっつけながら問うと、プリンはさも当然と言わんばかりに頷いた。
「当然でしょ? あのくらいスペックが高くなきゃ、この私に釣り合わないわ!」
「釣り合う……?」
世間一般の考えとして、それは恋とは呼べないのではないかと思ったが、恋愛経験ゼロのムギが言っても説得力に欠ける。
だけどやっぱり、プリンとローは気が合わなさそうだ。
「そんなことより、あんたローくんと最寄り駅が一緒って言ったわね。今日、一緒に帰るわよ。駅まで案内してちょうだい。」
「え、えぇ!?」
これにはさすがに、ムギでさえもドン引きした。
恋に懸ける熱量が凄まじいのは感心するが、やっていることはストーカーと変わらない。
「プリン先輩、ストーカーは犯罪ですよ?」
「な……ッ、失礼ね! 追っかけと言いなさい!」
「どっちも変わらないんじゃ……。」
「変わるわよ! 全国のアイドルファンに謝りなさい!」
「ご、ごめんなさい。」
でも、ローはアイドルでも芸能人でもないのになぁ……と思ったことは、心の中に留めておいた。
これ以上、巻き添えを被りたくはないから。
(約束は守ってくれるし、意外と太っ腹だし、プリン先輩も悪い人じゃないんだけどなぁ。)
ただ、プリンには裏の顔を含め、すべてを受け止めてくれる懐の深い男性が合うような気がする。