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パンひとつ分の愛を【ONE PIECE】

第6章 パン好き女子のご家庭事情




嫌な出来事とは、なぜこんなにも重なるものなのだろう。
ああ、発熱した月曜日にも同じことを思った気が……。

車内で嫉妬に塗れた視線を一身に受けたムギは、学校に着く頃にはすっかり疲弊していた。
だというのに、下駄箱のところで日曜日から接触を避けていたプリンと鉢合わせてしまう。

「あら、ムギじゃない。風邪で休みって聞いていたのに、もういいの?」

にっこりと微笑みながら近寄ってきたプリンは、菩薩のように優しげな表情をしている。
男性の心を掴むであろう笑みは、ムギの心をぴしりと凍らせた。
合コン前は“米田さん”呼びだったくせに、急に呼び捨てになっているところも恐怖を煽る要因だ。

「あ、あの……、プリン先輩。日曜日はその……。」

「え、なに?」

「日曜日は、台無しにしてすみませんでした……。」

「やだな、なにを謝ることがあるの?」

くすりと笑ったプリンの手が、ムギの肩にそっと触れた。
怖い、怖すぎる。

ムギの恐怖を証明するように、プリンの笑みにふっと翳りが差した。

「ねぇ、知らなかったわ。ムギって、ずいぶんローくんと仲がいいのね。」

「や、仲がいいわけじゃ……。」

一緒に登校しておいて言い訳もできやしないが、日曜日の時点で言うならば、本当にそんな仲じゃなかった。
それに、知らなかったと言うのなら、ムギだって数合わせの合コンにローが来るなんて教えてもらっていない。

(ていうか、あの人、女の子が嫌だとか言いながら、どうして合コンなんかに参加してたんだろ。)

人数合わせという線もあるだろうが、ローに限ってそんな理由で合コンに参加するとは思えない。

しかし、参加理由についての思案は、微笑みを浮かべながら目を大きく開いたプリンによって遮られる。

「あんたの意見はどうでもいいのよ。問題は、あんたがいつ、どこで、ローくんと仲良くなったかってこと!」

「えっと、だから、最寄り駅が一緒で……。」

「たったそれだけで、ローくんがあんたを気に入るはずないでしょ! あんた、私の目を誤魔化せるとでも思ってんの!?」

「う……。」

ぎりぎりと肩を掴む手に力がこもり、ムギの額から冷や汗が流れた。
三つ目の悪鬼様の登場である。



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