第2章 花の蜜に吸い寄せられるのは、蝶だけではない
「___ッッぅぅ、くぅ、っ」
肌を牙が突き破る瞬間。
襲いくるのは物凄い激痛で。
だけど、溶かされきった頭と身体は激痛さえもすぐに違うものへと変換していくのだ。
「は、はぁ、あ、あ」
ジュル ゴクン ゴクン
首筋から、血液が吸いとられていく対価として与えるものは。
人が得られる快感なんて非にもならないほどの。
『高揚感』。
「__ッッああっっ!!」
チカチカする。
血液が、逆流する。
だめ。
気持ちいい。
もうほんと、なんにも考えらんない。
「はぁ、ほんと美味しすぎ凛ちゃん」
舐めて咬み傷を治したあと、顔を上げた翔琉の口元にはうっすらとまだ血液が残っていて。
ふ、と。
目を開けた瞳は、深紅の紅い、色。
手の甲で血液を拭う翔琉の頬へと両手を伸ばし。
自分からキスを求めた。
「……っ、凛っ」
『まだ、血…-』
動く口元に、気にせずそのまま唇を押し付ける。
「……甘い」
唇に残る甘い血液を、ペロリと舐めとれば。
「……凛っ」
真っ赤な深紅の瞳のままに、後頭部に差し入れられた掌があたしを顔ごと引き寄せる。
さっきまで余裕に満ちた瞳が、感情を剥き出しにして、あたしを射抜き。
そのまま咬みつくように、深く舌を絡ませた。
「………んんぅっっ」
とろりと流し込まれるままに飲み込んだ甘い血液混じりの彼の唾液。
ついでに。
まだ中に埋め込まれたままの彼を、さらに固く、熱く滾らせて。
再開された激しさを増すその行為は。
疲れきったあたしの体を闇の中へと引きずりこんでいったのだ。