第3章 運命なんて、選んだ選択肢のひとつの結果でしかない
ジュル ゴクン ゴクン
「━━━っっぅ」
飲まれてる。
血液を貪る牙先から流れる唾液が、血液を沸騰させる。
全身を巡る血液が、騒ぐ。
熱い。
刺された首筋から、明らかに血液は失われていってるのに。
失われる、どころか。
さらに増幅しているような錯覚。
逆流しているような。
まるで全身の血液が、首筋に向かって逆流しているかのような。
トン トン
「凛ー?大丈夫?熱下がった?」
「!!」
甘い、甘い蜜の匂いが、変わる。
一瞬にして空気が、凍りつく。
「…………………ひっ」
凍ったまま、動く時間すら与えられずに。
無情にも軋むような音を立てて、ドアは簡単に開かれた。
「━━━━」
今、まさに、翔琉の牙はあたしの首筋に突き刺さっていて。
ドアを開けた未琴からは翔琉の赤い目もバッチリと視界におさまっている。
ドアに背中向けて固まってるあたしは、怖くて後ろを振り返ることが出来ない状態だ。
「凛から、離れて!!」
翔琉が牙をおさめると、首筋には少しの血液。
それだけで。
未琴にはあたしたちが『なにをしていたか』わかったはずだ。
「ごめん、未琴さん」
動けずにいるあたしから離れて、ベッドを降りた翔琉の、気配と。
ガタン、て。
未琴が壁にぶつかる音。
「え、なんで?二宮?じゃ、ない?━━誰?」
「俺だよ未琴さん。どーかした?」
「凛っ」
悲鳴とも取れる叫びに振り替えれば。
壁にもたれてずるずると下がっていく未琴の姿。
その顔にあるのは。
『恐怖』。
「………未琴」
「凛?なに、これ。あんたたち今、なにしてたの?」