第2章 花の蜜に吸い寄せられるのは、蝶だけではない
「凛」
あ……。
紅い、目。
「俺を、受け入れて」
引き抜かれた指先の代わりに、宛がわれた硬いもの。
それが『なんなのか』、なんて。
触れなくてもわかる。
「拒んだことなんて、ないでしょう?」
離れた掌へとキスをひとつ。
まっすぐに彼を見つめた。
「うん」
嬉しそうにそう、微笑むと。
膝裏に回った翔琉の両手の存在を、脳が感じとった瞬間。
本能的に両手を彼の首へとまわし。
自分から、翔琉の唇に自分のそれを押し付けた。
瞬間。
翔琉はあたしを資料室の棚へと押し付け、そのまま抱え込むような形で。
下から文字通り、貫いた。
「___ッッああッッ!!」
その、衝撃に。
押し付けていた唇は離れ、仰け反るように喉を晒す。
あたしを支えるものは、背中に押し付けられた棚の細い冷たい棒、と。膝裏からあたしを抱き抱える翔琉の両腕のみ。
不安定なその体勢に。
さらに自分の重さの分奥へ奥へと突き刺さる翔琉自身。
舌を絡ませ、深く繋がるのは下半身のみではなくて。
甘いその蜜のような翔琉の唾液を、夢中で貪った。
翔琉が、動く度に。
ぐちぐちと卑猥な水音がさらに欲情を煽らせる。
翔琉を見下ろすいつもとは違うこの目線にも、理性が外れる。たかが、外れる。
「かけ…る…っ」
「うん、わかってる」
翔琉が首筋を食む度に、舌を、這わせる度に。
体は期待して腟内(なか)を収縮させていく。
「咬むよ……っ」
言葉と共に見えた鋭い牙。
肌へと硬く鋭いそれが押し当てられれば。
あとは皮膚を突き破り一気に血液を貪るだけ。
それから。
目も眩むほどの快感を、与えるだけ___。