第2章 4月。担任とアイツと初対面と。
俺は山岡正嗣(やまおかまさつぐ)。
職業教師。
今は音駒高校に勤めている。
3月まで3学年の担任を勤めた。
今年も俺は音駒高校に残り、1学年の担任になった。
前年度まで3年の受け持ちだったから当たり前か。
「山岡先生、これ、次の担当クラスの名簿。
明後日の始業式まで目を通しておいてくださいね。」
「…はい。」
学年主任のオッサン…もとい、山崎先生から名簿を受け取ると自分が割り振られた机に座る。
前回も5組。
そして今回も5組。
代わり映えのない席に座れば隣から声をかけられた。
「山岡センセ。また5組?」
「またも何も、斉藤先生だって4組じゃないですか…」
彼は斉藤湊(さいとうみなと)。
今年30歳になる科学の教師。
身なりを気にしてるからか、はたまた愛想がいいからか女生徒にモテる。
またこの先生と隣か…
そうため息をつけば、斉藤先生はにやりと笑う。
「美優チャンみたいな子、入ってくるといいですね?」
美優…
椎名美優は、去年まで俺が担任をしていた生徒の中の1人。
新任教師だった俺を頼りながらも、自分のやりたいことをとことんやり、さらに将来の夢を叶えるため、そこそこ難関の専門学校に合格したっていうすげー奴。
…そして、俺が好きだった女。
ふうとため息をつくと、俺は呆れ顔で斉藤先生に話を返した。
「斉藤先生アホですね。あんなの世界に1人だけでいいです。つか、何人もいたら疲れてしょうがない。」
そう。
あいつは世界にただ1人いればいい。
そうでないと、他のアイツを探してしまいそうになるから。
俺は今さっき受け取った、顔写真入りの名簿をパラパラとめくった。